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コスモス新聞

コスモス新聞 病院からのお知らせ、ちょっとしたエピソード、医療に関するお話、患者様よりお寄せ頂いたメッセージ、思い出の映画など情報満載です。

コスモス新聞第98号

満州国軍隊内での単身応急手術 -昭和20年8月15日の忘れられない一齣-

吉峰 泰夫
「あれ、またいかん!!」ウーン、ヨシと胸膜縫合を結んだ途端、その端がまた破れシューと空気が吹き出してくる。
「参った!!」、あの手術書をあけてみたい。5日前までもっていたあの手術書を、と術中の手の指が震え始めた。
想えば、航空士官学校第59期生は、再々のB29の爆撃のため、満州に疎開することになり、私が軍医を努める第21中隊は北満蒙古に誓い鎭面で演習を開始したのは4月中旬であった。
午前、午後との猛訓練の最中、8月9日ソ連の参戦攻撃のため、攻撃用具のない航士校は直ちに南端の通化に転進すべしとの通達により、持参物品総て放棄せよとの下命で、手術書を始め医師免許証等を地中に埋めて出発し、南満の通化の近く山城鎭に着いたのは14日の夕刻であった。
翌15日早朝、連日石炭車での疲れ切った身体で早々に起き上がる気もせずにいると、直ちに!との隊長よりの非常呼び出しが合った。
昨夜斥候巡回中の士官候補生が敵と交戦、空が白んでくると敵はソ連ではなく満軍であった。
隊長同士の対談で負傷兵には当方軍医が責任を持つとの意で、早々に解決したので、軍医は直ちに満軍隊内に行けとの下命であった。
取り敢えず直ちに単身、満軍兵舎内の手術室に入って驚いた。
粗末なコンクリート床上の簡単手術台上に、顔面蒼白、呼吸不整で前胸部をガーゼ塊で押さえつめられている負傷兵がいた。
ガーゼ塊をのけると直ちにシャーと空気が吹き出してくる。
スーと息を吸った途端シュァーと吹き出す。
胸部穿通創かとは思いながらも胸部手術はまだ見たこともない。
卒業後任官したので中尉であるとはいえ、手術は卒業前大学で虫垂炎位をさせて貰っただけである。
手真似でリンゲル液を大腿皮下に注射させた。XPもないしO2もない、輸血などある状況ではない。
1%1ポカインで肋膜神経を局麻し、解剖を考えながら射弾創の胸膜に達した。
空気はやはりシュァーと吹き出している。が「ああ、これで何とかなる」と縫合可能な範囲にまで露出し連続縫合「よしやった」と結んだ途端、また創の端が破れシュァーと吹き出してくる。
その時であった、「あれはいかん」と手が震え出したのは。
「あの手術書を!!」と、「ああ、あれがあれば」と思ったのはその時である。
しかし待てよ胸膜は薄く強く緊張している、「このためではないか?」と太い絹糸を上下肋骨にかけて肋間を縮め、結ぶと胸膜はゆるんできた。
「よし!!」と胸膜を結ぶと空気はスーと止まり呼吸が楽になったらしい。
横にいた兵が手をあげて喜んだ。
「ああよかった。日本軍、中尉の面目がたった」と思いながら、かかる手術は当時の経験の浅い中尉の泣きどころであった。
8月15日がくると敗戦とともに、あの手指の震いを思い出すのである。

骨粗鬆症の朗報

社会の高齢化に伴い、骨粗鬆症と診断された患者さんが急激に増加、近年、その診断、予防、治療法の確立が大きな医学の課題になってきています。
骨、カルシウム等に関する研究も飛躍的な発展を遂げ、遺伝子レベルでの研究、開発が盛んになり、骨の調整機能も解明されつつあり、血液、尿などでの測定も数多く開発されています。
9月より我々整形外科医が待ち望んでいた骨粗鬆症の新しい治療薬が発売されました。今までも何回か骨粗鬆症については書いてきましたが、もう一度勉強してみましょう。

1.骨粗鬆症とはどのような病気なのでしょうか?
骨はカルシウムとコラーゲンからできていて、両方が減ってくるのが骨粗鬆症といわれています。その原因としてはいろいろありますが一番問題になっているのは年をとると共に骨量が減ってくることです。
加齢とともに骨の生理的減少は男と女では違いがありますが、女性の場合は閉経後に骨量の減少が著しくなります。
どんな健康な人でも年齢と共に骨量が減ってきますが、その限界を越えて減ってくる人が骨粗鬆症と診断されます。
昔はレントゲンで骨量を主観的に判断していましたが、現在は骨量測定装置で骨量を判定することが可能になっています。(どんな有名で経験がある先生でもレントゲンだと主観的判断のため30~40%位骨量が減らないと判断しにくいの骨粗鬆度が狂う事があります。)
更に骨量が減少してくると脊椎の圧迫骨折や大腿骨の頸部骨折、手関節の骨折などがちょっとしたことで起こってしまいます。

2.どうして骨粗鬆症がおきるのでしょうか?
最近、研究が進みいろいろなことがわかってきました。
骨の代謝からみると、一見骨は代謝していないように見えますが実際はそうではなく、新しい骨ができる時に、まず古い骨が吸収されて、そこに新しい骨ができます。
正常な状態であると吸収されただけ新しい骨が形成されますから骨の量はいつもほぼ一定になります。
ですが、この病気はなにかの原因で骨の吸収の方が多くなり、それに見合うだけの骨の形成ができなくなり、収支バランスが崩れて次第に骨の量が減ってくるのです。
ではどうしてこの骨吸収が増えてくるのかというと、その一因として骨吸収を行うホルモンである副甲状腺ホルモンの相対的過剰が存在すると考えられています。
骨を保存する女性ホルモンやカルチトニンが減ってくると、また活性型ビタミンDも減ってきます。カルチトニンとビタミンDは骨の形成を盛んにする作用があり、そういう骨を作るホルモンもこれらの減少とともに減っていくのです。

3.どんな症状があるのでしょうか?
症状としては一番患者さんにとって苦痛になるのは腰痛、背部痛だと思います。
この痛みはじっとしている時はあまり痛みはみられませんが、動き始めに痛いという方が多いようです。
次に問題になるのは骨折です。
老人になって背中が曲がってきたとか、背が縮んできた時には骨萎縮がみられたり、圧迫骨折がみられたりします。痛みが伴いますが日常生活には影響ないようです。
でも大腿骨頸部骨折がおこると寝たきりになる可能性が高く、現在大きな問題となっています。
若い時には何でもないようなちょっとした事によって簡単に骨が折れてしまいます。新しく骨を作る力が低下していますので骨折してもくっつきにくく、こんな事でと思われるように、本当に信じられない位簡単に骨折します。
また、この病気は代謝の盛んな海面骨といわれる部分に起こりやすく、その為背骨が一番弱くなり、骨自体がスカスカになってちょっとした力が加わると少しずつ骨折を起こし、圧迫骨折となります。

4.骨量測定器とはどんなものでしょうか?
当院に設置されている測定器は前腕骨DXA法といわれる測定法による測定器です。腰椎DEXA法は腰椎では加齢に伴う変形的変化や大動脈の石灰化などの影響を受けやすく、その再現性にやや問題があり、現在前腕骨の測定意義が見直されています。
前腕骨自体が加齢の影響を受けにくく海面骨と皮質骨を分けて測定することが可能であり、橈骨は(手関節の骨)荷重骨ではありませんが骨粗鬆症による骨折の起こりやすい場所のひとつで骨量測定にて骨折の予知にも有効であるといわれています。

5.新しい骨粗鬆症の薬について
現在いろいろな骨粗鬆症の薬が承認されていますが、今回承認された薬は以前の物より骨量の増加作用が強いといわれています。
実際アメリカやヨーロッパでは第一選択薬として評価されています。
この薬はアレンドロネートといわれ、1970年代に学会で報告され、骨吸収抑制作用、骨量増加作用が強力であることが見いだされました。
1990年代になり世界各国で承認されました。
この薬の効果を最大限に発揮するにはいろいろな注意が必要です。
・水以外の飲み物で内服しないこと。
・コップ一杯、約180mlの水で内服しないと胃に到達しにくく効果が出るどころか副作用が出現することがありますので注意が必要です。
・食物とか他の薬と一緒に内服すると吸収が悪くなり効果が発揮できません。
・噛んだり、つぶしたりすると効果がありません。
・内服後は少なくとも30分以上は最初の食事をとらないようにして、横にならない ようにして下さい。
・就寝時、又は起床前には内服しないようにしましょう。
・もし内服を忘れても、その時は内服しないで次の日の朝に内服して下さい。
上記を守っていただければ、この薬の効果が最大限に発揮されるでしょう。

6.生活を習慣づける事が大切です。
骨粗鬆症は骨折が起こってから治療するのでは思うような治療効果が得られません。骨量が減少しはじめたら治療を開始することが骨折をある程度予防することが可能です。そのためにも骨量を定期的に検査することが必要です。
足腰を鍛えることも大切で筋肉を丈夫にすることが骨を丈夫にすることにもつながります。
一日6000~8000歩、歩くことが必要といわれていますが膝を悪くすることも多く、人それぞれの適度な運動を毎日続けることが大切です。
特にプールの中で歩行することは浮力のため膝にかかる負担を少なくするため運動効果もみられ、お薦めです。
それもできないという人は一日15分位、全身を動かすような体操をしましょう。
あまり疲れない程度に、適度な疲労を感じる程度にして習慣づけることが必要です。ラジオ体操のようなものが良いでしょう。
骨折や痛みの少ない有意義な老後をおくることが人生最大の喜びです。