香川県高松市での整形外科・内科・健康診断・予防接種は吉峰病院へ。

English

コスモス新聞

コスモス新聞 病院からのお知らせ、ちょっとしたエピソード、医療に関するお話、患者様よりお寄せ頂いたメッセージ、思い出の映画など情報満載です。

コスモス新聞第194号

関節リウマチについて(3)

コスモス新聞193号の続きです。

リウマチの薬物療法

その昔、リウマチの有効な治療薬はなく、温泉療養へ出かけるのが関のやまでした。1950年、ヘンチが副腎皮質ホルモン剤を身動きのとれないリウマチ患者に使用したところ、ダンスができるようになったとニューヨーク・タイムズは報じたそうです。この発見により、ヘンチはノーベル賞を受賞しました。

薬の種類
抗炎症剤・・・炎症を抑えて痛みを和らげる薬

1.非ステロイド系抗炎症剤
痛みや炎症のもとになるプロスタグランジンという物質が体内で作られないようにすることで炎症を抑えます。
即効性で鎮痛・解熱作用もあわせ持ちます。副作用は胃腸障害(胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍など)がよくみられます。
副作用対策として、空腹時服用しない、胃腸薬の併用などがあり、また坐薬、腸溶剤、貼付薬など様々な薬の形があります。

2.ステロイド剤
副腎皮質ホルモンを人工的に合成したもの。非ステロイド系抗炎症剤と同様にプロスタグランジンの生成を抑えますが、より早い段階で生成を抑え、また免疫の働きを抑える作用もあります。効果は強力です。
ある期間使うと副作用が出てくることがありますので安易な使用はしないのが原則。副作用としてはムーンフェイス、不眠、食欲不振・過剰、だるさ、血圧上昇などの他に、白内障・緑内障、ステロイド潰瘍、ステロイド筋症、骨粗しょう症、動脈硬化/血管炎、糖尿病の誘発・悪化、感染症にかかりやすくなるなどもあります。
非ステロイド系の薬では炎症が抑えられない場合や血管炎をともなうリウマチなど、使用が限定されます。最近では病気の広がりを食い止めるために早い段階で抗リウマチ剤と併用するなどの試みも。錠剤、注射剤の他に関節に少量を注入する方法もあります。

3.抗リウマチ剤・・・免疫の異常を改善して病気の進行を抑える薬です。
①免疫調整剤
「免疫の異常」を改善するための薬で、免疫系に作用するものと、滑膜の増殖の抑制に作用するものがあります。
一般に抗リウマチ剤は遅効性で飲み始めてから2~3ケ月以上たたないと効果がでてきません。副作用は腎障害や肝障害、造血障害などがみられますが、薬によっては自己免疫疾患や間質性肺炎などもあります。出現も個人差があり様子をみて他の免疫調整剤に変えたり免疫抑制剤に切り替えるなどの方法を考慮します。
②免疫抑制剤
主に白血球やリンパ球が新しく作られないようにして免疫の働き全般を抑える薬です。もともとは臓器移植で拒絶反応を抑えるための薬ですが、自己免疫疾患の悪化を防ぐのに有効です。
副作用は肝障害、胃腸障害や、正常な免疫の働きも抑えるため、造血障害や長期ではがんにかかりやすくなる傾向もあります。胎児の催奇形性があるので妊婦や妊娠の可能性のある女性には使用できません。薬によっては、腎障害、間質性障害などもあり、生殖細胞の障害の出る薬は子供を望む男女には使用できません。副作用が重いため進行が早い例や重症例に少量を使用します。
リウマトレックスも有効な薬で、この数年間広く使用されるようになりました。核酸合成を阻止し、細胞増殖を抑制する薬理作用があるため、当初抗がん剤として使用されておりました。これを応用して海外で関節リウマチへの効果が報告され、国内でも99年にリウマチ治療用のカプセル剤として承認されました。治療効果の高さから、世界各国で標準薬とされております。現在ではこの薬とステロイド剤が抗リウマチ薬の双璧で、寝たきりだった病人は少なくなり、疼痛から解放され、普通の日常生活を送れるようになったのです。その福音には計り知れないものがあります。ところでリウマトレックスの副作用についてですが、肝,腎機能の低下した人や透析患者には禁忌です。肝臓の解毒作用が低下したり、尿に薬が排泄されないため中毒量となり、貧血や肺炎をおこすことがあります。また効能にも個人差があります。そのためにも厳重な危機管理体制を取っております。定期的な血液検査(貧血、肝、腎)、胸部レントゲン検査は大切です。ほかにも服用量については細心の注意を払わなければなりません。この条件を順守すれば、副作用は未然に発見され、重大にはなりません。

薬物療法では、消炎鎮痛剤を基本として、副腎皮質ホルモン剤や免疫抑制剤の併用療法で充分な治療効果が得られます。疼痛は緩和し、関節の動きもスムーズとなり、症状の進行・関節の変形は阻止されます。もっとも、これらの治療は諸刃の剣でもあり、副作用の再現には細心の注意を要します。関節炎のみならず、五臓六腑いずれかの臓器が侵されたり、皮膚潰瘍を形成したりしてくると、悪性関節リウマチとしてより強力な治療法が必要とされます。各治療法の適用、その時期と期間との組み合わせは、患者さんの状態に応じて慎重に吟味されます。とはいっても、これらの従来の治寮は対症的治療法で、必ずしも的を得た治療法とはいえないところもあるのはいなめません。この10年、より的を得た治療法が開発されました。リウマチの原因は不明ですが、その病態、特に進行過程である炎症・免疫反応が分子のレベルで解明され、そこで主役、脇役、善玉、悪玉がリストアップされました。病態の悪循環を断つため、最も肝心な悪玉に的を定めてミサイルを発射する治療法が開発されました。

逆ピラミッド方式へ
従来の薬物療法は「ピラミッド方式」という考え方に基づき行われてきました。効き目は弱くても副作用の少ない薬から投薬を開始し、炎症が抑えられなくなったら強い薬に徐々に切り替えていくという方法で、現在でも多くの病院で行われています。しかし、最近では「逆ピラミッド方式」あるいは「ステップダウン・ブリッジ方法」と呼ばれる早期からの積極的な投薬治療の考え方が出てきました。スタート時から非ステロイド系抗炎症剤に抗リウマチ剤を併用したり、重症の場合はステロイド剤も使うなど、最初から強い薬を複数使い効果が現れたら薬の数や量を減らすというものです。関節リウマチでは初期に進行するものも多く、また診断時に既に進行している場合もあり、初期の段階で積極的な治療を行わないと障害を最小限に食い止められないことからこのような見直しが行われつつあります。

新しい治療方法

関節の滑膜増殖を引き起こす物質を抑えたり、骨の破壊を抑えるバイオ製剤や、異常な遺伝子をコントロールする遺伝子治療など、新しい治療法の研究が進められています。
これまでの薬は、ほとんどが化学的に合成された薬でしたが、近年、生物が産生した蛋白質を利用した薬が作られるようになりました。これが生物学的製剤と呼ばれるものです。最新のバイオテクノロジー技術を駆使して作られるので、バイオ医薬品とも呼ばれています。
炎症を引き起こす重要な分子を標的とし、それを徹底的に抑え込むように設計された薬です。化学的に合成された薬は、肝臓か腎臓で代謝されるため、このどちらかの臓器に負担がかかりますが、生物学的製剤は蛋白質であり、従来みられるような副作用は少ないとされています。生物学的製剤は、構造上、大きく二つに分けることができます。一つは抗体製剤、もう一つは受容体をまねた製剤です。抗体製剤の抗体は、標的とする分子とだけ強く反応するモノクローナル抗体と呼ばれるものです。以前は単一な抗体だけを大量に作り出すのは技術的に困難だったのですが、分子生物学的手法が進展したことで、そうした単一の抗体群を作り出すことが可能になりました。モノクローナル抗体なら単一物質とのみ反応するので、標的分子にのみ反応させる薬として使えるわけです。
一方、受容体をまねた薬は、標的分子の受容体を設計図である遺伝子の配列から作り出し、ヒトの抗体の一部分とつなぎ合わせて血液中で安定化させたものです。この薬を自分の受容体と勘違いして標的分子が結びつくことで、その働きが抑えられるわけです。この生物学的製剤は、関節リウマチの治療に画期的な進歩をもたらしました。
アメリカのテキサス大学教授であるフライシュマン博士は、「従来の薬ではどんなに工夫しても、寛解と呼ばれる状態にもっていける人は40%前後であったが、生物学的製剤を90%以上の人に積極的に使うようになった結果、それが75%にまでなった」と感慨深げに話していました。その後、米国で生物学的製剤を積極的に使う多くの医師の共通した感想です。最近では、関節リウマチの関節破壊が抑制されるだけでなく、人によっては壊れた関節の一部が元に戻った、という報告があるほど、これまででは考えられなかった治療成績が次々と発表されています。生物学的製剤の標的としては、炎症と関連するサイトカインが第一目標となりました。
今のところ、アメリカで承認されている関節リウマチに対する生物学的製剤の四つは、すべて炎症性サイトカインを標的としたものです。関節リウマチの関節では、サイトカインの一種であるTNFαという物質が大量に作られています。TNFαはもともと人の身体にあるものですが、関節リウマチでは異常に増加しています。関節リウマチが起こるメカニズムにはさまざまな要因が関係していますが、なかでもTNFαは重要な物質です。この働きを止めることは、関節リウマチの症状や進行をくい止めることにつながります。レミケードはTNFαにくっついて、その働きをおさえ、TNFαを作っている細胞そのものも壊します。レミケードは「抗TNFα抗体」とも呼ばれており、この治療を抗TNFα抗体療法といいます。
これは米国で開発された薬剤で、症状をやわらげるとともに、関節破壊をくい止める効果に優れることから、海外では高い評価を得、使用されています。従来の薬で十分な効果が得られなかった場合に、この治療を始めます。レミケードは病院で点滴します。1回の点滴は2時間以上かけて行います。初めての点滴の後は、その2週間後、6週間後に投与し、以後は8週間ごとになります。レミケードによる治療を行っている期間はメトトレキサートも服用します。重要と思われる副作用としてレミケードはTNFαの働きをおさえることで炎症をしずめるだけでなく、体の抵抗力を落としてしまうことがあるため、感染症が起こりやすくなります。
次回はリウマチのリハビリテーションについてです。