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コスモス新聞

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コスモス新聞第190号

新型インフルエンザ

メキシコに端を発した新型インフルエンザ。
感染は世界各国に広がり、世界保健機関(WHO)は4月29日、警戒度を「世界的大流行直前の兆候」を意味するフェーズ5に引き上げました。豚のインフルエンザウイルスが、どうやって人に感染する新型になったのか。どうすればウイルスから身を守れるのか。

今回は新型インフルエンザに関する基礎知識をまとめました。

各国で確認された新型インフルエンザ患者の多くは、もとをたどればメキシコで感染したとみられています。発端は4月24日、WHOが「メキシコと米国で豚インフルエンザの人への感染が相次ぎ、メキシコ市周辺で死者60人前後」と発表しました。米疾病対策センターが同日、米国内の豚インフルエンザが「人から人」へ感染するウイルスであったと断定し、「新型」への懸念が一気にふくらみました。5月2日までの報道によると、メキシコでは、感染が確認された16人が死亡し、ニュージーランドでは4人の感染が確認されたが、メキシコに3週間滞在して帰国した同じ高校の生徒だと。 
他にもイスラエル、オランダ、スイス、オーストリアでは全員が直前までメキシコに滞在していました。メキシコに渡航歴がなくても、帰国した人から感染したと断定または推定される感染者も増えています。カナダの保健局は、メキシコを学校旅行で訪れた生徒4人の感染を確認し、その生徒からうつされた症例が1人あると公表。米ニューヨーク市の高校での集団感染や、スペインや英独で少なくとも1人について、同様の感染ルートが疑われています。

インフルエンザウイルスは直径約100ナノメートル(1万分の1ミリ)。中心にRNA(リボ核酸)という遺伝子があり、周囲のたんぱく質の種類でA、B、C型の3種類に大別できます。人間、鳥、豚、馬、アザラシなど多くの動物に感染するのはA型ウイルスです。
A型には、いがぐりのとげのようなたんぱく質の突起が多数あり、突起はヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)の2種類でHは16種類、Nは9種類あります。HとNの組み合わせにより、「H1N1」「H5N1」など計144種類にタイプが分けられるのです。

インフルエンザウイルスは本来、水鳥の体内をすみかとしていたと考えられています。ウイルスは生きた細胞の中でしか生存できません。宿主が死ねば自分も死ぬため、ウイルスは水鳥に対して徐々に毒性をなくし、今では感染しても症状をださなくなりました。

ウイルスは一般に、動物の種を越えて感染する事は少なく、ウイルスと細胞はカギとカギ穴のようにつながる部分を持っており、種が変わるとカギが合わず感染できなくなってしまいます。ところが、まれにウイルスが変異して別の種類の動物への感染力を持つことがあります。あるいは、特定の動物が仲介役になって別種への感染を引き起こす場合もあります。代表的な仲介役が豚なのです。豚は鳥と人のウイルスの両方に感染するため、体内で鳥、人、豚のウイルスの「雑種」を作るのです。
この雑種は簡単に種の壁を乗り越えてしまいます。人がこれまで接したことのないウイルスです。人は免疫を持たないため、感染すると重症化する恐れがあり、新型インフルエンザ感染を引き起こすことになるのです。
しかし、人にどの程度の病原性を発揮するかは簡単には予測できません。
H5、H7のウイルスは鶏を100%殺す強い毒に変異することもありますが、このウイルスでも人は発症しないこともあります。逆にスペイン風邪のように、鳥では弱い毒なのに人間に大被害をもたらす例もあるのです。
インフルエンザの予防にはワクチン、治療には抗ウイルス薬が使われます。日本で使われるワクチンは、鶏の有精卵にウイルスを注射して増殖させ、濃縮した後、薬剤でウイルスを死滅させて作ります。ワクチンを投与すると、人体の免疫機能がウイルスの抗体を作り、本物のウイルスが体内に侵入しても、ウイルスを撃退してくれるのです。
しかし違う型のウイルスには効きません。新しいワクチン開発には4~6カ月もかかります。今回の新型インフルエンザのワクチンが使えるようになるのは、早くても秋以降になりそうなのです。

治療に使われるタミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬は、体内に入ったウイルスの増殖を抑えます。ウイルス表面の突起ノイラミニダーゼは細胞表面にとりついて増殖したウイルスが次の細胞に移る際、離れるのを手伝います。抗ウイルス薬はこの働きを邪魔して、ウイルスをその場に「足止め」させることで増殖を抑えるのです。

日本のインフルエンザ対策は、今年2月に改定された「新型インフルエンザ対策行動計画」が基になっています。計画は、新型インフルエンザ発生前から、国内で発生して大流行を迎え、小康状態に至るまでを5段階に分類し、段階に応じた対策を定めています。
WHOが警戒レベルを「フェーズ5」としているものの、国内で発生していない現段階は、第1段階(海外発生期)になります。この段階で最も重視しているのが、国内侵入を食い止める水際対策です。
発生国からの入国については、旅客機は4空港(成田、関西、中部、福岡)、客船は3港(横浜、神戸、関門)に集約化して検疫を実施し、新型インフルエンザの疑いが判明した人は隔離します。その人と長時間近くで過ごした人なども、空港近くの施設などに10日間程度とどまってもらう措置をとります。
国内で患者が発生すると、第2段階(国内発生早期)に移行し、国民の活動を制限する対策が大幅に増えます。発生地域の住民の外出自粛、集会や興行の自粛、学校の一時休校、企業の業務縮小などです。国の方針に基づき主に都道府県知事が要請し、都道府県単位で対応が取られます。
ただし、今回の新型インフルエンザは弱毒性と指摘されているため、「強い規制を伴う対策の実施はマイナス面も大きい」との声も出ています。政府も柔軟な運用をする方針のようです、
1918年ごろに世界的に流行したスペイン風邪と呼ばれるH1N1亜型のA型インフルエンザウイルスを豚と猿、マウス、フェレットに接種したところ、豚だけが生き残り、一時的な発熱と軽い呼吸器症状だけで済んだことが分かりました。これにより、スペイン風邪の流行拡大に豚が関与し、豚の間でウイルスが代々受け継がれた結果、現在の新型ウイルスに至ったという説が有力しされています。
米カンザス州立大やカナダ食品検査局などの研究チームが、4日までに実験結果を米ウイルス学誌ジャーナル・オブ・バイロロジーに発表しました。
スペイン風邪の流行時には、人だけでなく豚にも症状がみられ、30年に米中西部で豚インフルエンザが流行した際にも、同じ亜型のウイルスが採取され、確認されています。
一方、米コロンビア大などの研究チームは、世界保健機関(WHO)の主導で解読され、データベースで公開された新型ウイルスの全遺伝情報(ゲノム)を解析し、結果を欧州の感染症専門誌ユーロサーベイランス電子版に発表されました。
それによると、新型インフルエンザウイルスは北米と欧州・アジアの豚インフルエンザウイルスが交ざっており、北米ウイルスの祖先の一つは、98年に採取された人、鳥、豚の3種のウイルスが組み合わさったH3N2亜型だという事が分かりました。
新型インフルエンザウイルス(H1N1)は、暫定的な分析によると病原性(毒性)の弱いタイプ。高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)が新型になった場合と比べ、被害の程度は重くないとされていますが、患者が急増すれば重症者や死者の増加は避けられません。人の間で感染を繰り返すうちに病原性が強まることもあり、注意が必要です。
従来の豚のH1N1型は、人のAソ連型と同様に呼吸器感染にとどまりますが、H5N1型は全身感染を引き起こし重症化します。

インフルエンザウイルスの病原性の強さを決める遺伝子はいくつか分かっており、世界保健機関の緊急委員会に出席した国立感染症研究所の田代眞人インフルエンザウイルス研究センター長は、今回のウイルスは強い病原性を示す遺伝子は持っていないと分析。「突然変異などで病原性を獲得しない保証はないが、現時点でその可能性はない」としています。
対策では「マスクはしっかり着用」「手洗いは15秒以上丁寧に」。新型インフルエンザの対策として、厚生労働省などは「通常のインフルエンザ対策」の徹底や冷静な対応を改めて呼び掛けています。
インフルエンザは、せきやくしゃみの飛沫で感染するため、新型でも従来の対策が重要です。厚労省がホームページに掲載する「対策ガイドライン」には、感染拡大の防止策として、せきなどの症状がある人がマスクを付ける「せきエチケット」を奨励しています。ほかにも、うがいの実施や、手洗いは石けんで15秒以上行い、紙タオルなどで十分にふき取ることなどを求めています。マスクは市販のもので問題はなく、装着時には、鼻や口、あごをしっかり覆う。使用後は、口を覆った部分には極力触れずに外し、ふた付きのゴミ箱に捨てるのが望ましいとされています。
耐性ウイルスの登場や服用後の異常行動で表舞台から姿を消しつつあったインフルエンザ治療薬のタミフルが注目を集めています。世界保健機関が新型インフルへの効果を認めたためで、一躍「復権」した形になりました。
タミフルは、インフルエンザ治療薬として2000年に承認され、01年に販売開始。A型、B型インフルエンザ特効薬として注目を集めました。しかし、07年冬季に耐性を持つウイルスが登場。昨年冬の流行シーズンでは、ほとんどの型のウイルスで効きが悪かったとされました。服用後の飛び降りなど異常行動との関連も一時取りざたされ、医師の敬遠に拍車を掛けました。
「過去の薬になりつつあった」タミフルですが、メキシコを中心に猛威を振るう新型インフルには効果があることが判明。世界的に需要が高まる中、日本政府も3300万人分ある備蓄をさらに増やす方針です。
世界保健機関は4月28日に、新型インフルの警戒レベルをこれまでの「フェーズ3」から「フェーズ4」に、30日にはさらに「フェーズ5」に引き上げました。「フェーズ5」とは、「かなりの数の人から人への感染が見られる」という状態であり、ここまでくると各国政府はかなり警戒を強めることになります。
「フェーズ5」より上の段階として、最高段階である「フェーズ6」の「世界的な大流行が見られる」があります。フェーズ6の世界的大流行の状態を「パンデミック」という言葉で表すこともあります。
警戒レベルが「フェーズ4」に引き上げられた後、日本の当局はメキシコ、アメリカ、カナダから到着する全ての国際便乗客に対して、日本に入国する前に機内検疫を実施することを決定しました。この機内検疫は検査官がまだ慣れないこともあって、到着してから終了までに1~2時間もかかり、乗客にとっては不便な事態になっています。
成田空港検疫所の場合、乗客から新型インフルが見つかった場合は、その患者を病院に隔離します。しかし新型インフル以外のインフルエンザなどが見つかっても、そのまま問題なく入国できます。
また主要な大学は、「国内における人から人への感染が見つかった時点で、全ての授業を休校とし、キャンパスも立ち入り禁止にする」と発表しています。
新型インフルの問題が表面化してからまだ1週間程度しか経っていないのに、すでに世界的な問題になっています。また今後どのような展開になるか予想ができません。どうなるにしても、早く事態が収束してくれることを願いましょう。