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コスモス新聞

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コスモス新聞第160号

インフルエンザについて

患者様から「新型インフルエンザのワクチンは今年の冬はまにあうのですか、どうやって作っているのですか」とのメールをいただきました。
皆様に伝える形で、ワクチンの作り方の基本についてお話します。

ワクチンとは、ウイルスのことです。ウイルスは、生きた細胞の中でしか増殖できませんから、ワクチンを作るには、そのワクチンとなるウイルスが増殖出来る細胞が大必要となります。
インフルエンザは、ウイルスによる病気であるらしいことは、昔から判っていました。カゼの患者さんの鼻水を集め、細菌を通さない濾過器に掛けて細菌を除いた鼻水を、ヒトの鼻に滴下したら、カゼを発症させることが出来たからです。
しかし、その原因ウイルスをヒト以外の動物で殖やす方法がなかなか見つかりませんでした。ヒトのインフルエンザウイルスが増殖するのが判った最初の動物は、イタチ科の動物フェレットでした。しかし、フェレットは、肉食動物であり、またイタチ科特有の臭気を持つ動物ですから、実験には使い難いという欠点がありました。
次に、見つけ出されたのは、発育鶏卵という特殊な若い細胞です。ウイルスを殖やす宿主としのニワトリの卵は、色々な特徴があり、現在もワクチン製造に全世界で用いられています。
インフルエンザは、毎年のように流行するウイルスが変化しますので、来年の冬に用いるワクチンにどのような性質のウイルスを種として用いるべきかを流行が起こる1年も前から予測するのは、大変に難しい問題です。流行するウイルスとワクチンのウイルスの型が違ってしまうと、ワクチンはあまり効果を発揮出来なくなってしまうからです。

国内では、国立感染症研究所が、ワクチン用種ウイルスの選定の責任を持っています。
来年の冬は、例えばH3N2とかH5N1が流行すると科学的に判断すると、そのウイルスを全国のワクチン製造メーカーに配布します。ワクチン用の種ウイルスが決まると、各ワクチン製造メーカーは製造の準備にはいります。
まず最初にニワトリの卵の手配をします。最終的には数百万人分のワクチンを作るには、各メーカーは毎日百万個程度のニワトリの卵を使用します。
ニワトリの卵という表現は、すこし科学的には不正確で、正式には発育鶏卵と呼びます。受精卵を37℃程度のフラン器で保温すると、21日後にはヒヨコが生まれます。このヒヨコが生まれるまでの期間、即ちヒヨコの身体が作られつつある途中の状態、別な表現をすると孵化するまで発育している状態の卵を発育鶏卵とよびます。2日でヒヨコが生まれますが、10日から12日齢の発育鶏卵をインフルエンザウイルスの増殖に用います。この時期の発育鶏卵は外側に卵殻というカラがあり、そのカラのすぐ内側には太い血管が走り、更に卵殻膜という白い膜があり、この卵殻と卵殻膜で酸素交換を行っています。黄身と白身を栄養分にして哺乳動物の胎児に相当する鶏胚が日ごとに大きくなりつつあります。鶏胚は羊膜という透明で薄い膜の中で羊水中に浮かんでいます。將尿膜に囲まれた大きな袋を形成している細胞がウイルス増殖の場となり、増殖したウイルスは將尿液に出てきます。保温した鶏卵を暗室に移し、卵殻の外から光を当て鶏胚が元気に動いていることを確認し、卵殻の外側からインフルエンザウイルスを直接注入し、フラン器に戻し、3日ほど保温を続けます。その間、鶏胚が元気であることを確認し、死んでいる卵は廃棄します。
次に安全性と有効性を確認する試験がおこなわれます。
その一つは、無菌試験です。更にウサギに注射して発熱を起さないかの発熱試験を、モルモットに注射して体重の減少を引き起こさないかなどを確認します。このウイルス液が動物に注射され、免疫抗体を充分に作ることを確認します。
最後に、自家検定で、無菌であり、動物試験で無害なことを確認されたウイルス液のみを、ヒトに注射したとき強い免疫を与えるようにウイルス濃度を特殊な方法を用いて調整します。
その後、厚生省の国立衛生研究所に送られて、国家検定がおこなわれます。
合格したロットに対して、国家検定合格証書が1本つづ貼られて、ようやく医薬品としてのワクチンの出来上がりです。

ワクチン作りは、非常に手間暇がかかり、全行程無菌であるための細心の注意が必要で、全行程に数ヶ月かかる大変な仕事です。
ワクチンは国家の要請で各研究所が独力で作ります。

以前インフルエンザワクチンの接種者は、国民の0.3%と世界に例を見ないほど少ない国となっていました。そのため毎年数万人のお年寄りがインフルエンザの犠牲になっていました。ワクチンを接種して、「百害あって一利なし」ということは絶対に有り得ないことです。ウイルスの病気は、治す方法がないのですから、完璧ではないとしてもワクチンで予防することが最大の防御になるのです。

ワクチンと血清の違い

「病気を治すときにワクチンを使い、毒ヘビにかまれると血清を用いますが、インフルエンザの血清はないのですか」とのメールが寄せられました。
一般の方は、ワクチンと血清の違いを知らないと思われますので、質問に答える形で説明します。

マムシのような猛毒を持っている毒ヘビにかまれたり、破傷風菌のような猛毒を作る細菌の感染を受けると、そのままにしていると命を落とす恐れがあります。ヘビの毒は細胞を溶かし、破傷風菌の毒は神経を麻痺させます。このような毒による災いには、毒に対する免疫抗体を含む血清(抗毒素免疫血清)を注射すると、毒に対する抗体が毒と結合して毒力を消し去ります(科学的には中和)。
免疫抗体による疾病の治療を免疫血清療法とよび、北里柴三郎博士が世界に先駆けて発見し、またヘビの毒に対する免疫血清は北里柴三郎博士の弟子、北島太一先生が研究した優れものです。
血清療法は、免疫学的な理論にもづく治療法です。またワクチンも免疫抗体による疾病の予防、治療に用いられます。ワクチンも免疫血清も共に基本的には免疫抗体を利用するのですが、何が違うのでしょうか。先ず最初に免疫の種類について、説明します。

ハシカに一度かかると二度とハシカにはかからないと昔から言われています。これは本当です。ハシカはハシカウイルスによって起る病気ですが、ハシカウイルスは体内で増殖し、血液の流れに乗って全身を駆けめぐります。別な表現をしますと、ハシカウイルスは免疫を作る全身の細胞を刺激して、その結果強い生体防御機構を作ります。この生体を守る働きを免疫と言いいます。免疫とは、身体に侵入した異物、例えばハシカウイルス、によって誘導され、ハシカウイルスとのみ結合する抗体という物質を作らせることを意味します。抗体を作らせる働きをする物質、例えばハシカウイルスを抗原とよびます。抗原によってつくられ抗原とのみ結合する性質の物質を抗体と呼びます。抗原であるハシカウイルスが生体に侵入して病気を起しても身体のなかに抗体が出来ます。血液中に抗体が存在していると、ハシカウイルスが再度侵入して来ても、感染する前に存在している抗体がすぐにウイルスを捕らえて中和することが出来ます。自然界ではヒト以外はハシカにかかりません。そこでハシカウイルスをウサギに何回も大量に注射したとします。そのウサギはハシカウイルスの感染は受けずハシカにもなりませんが、体内にはハシカウイルスに対する抗体が出来ます。結局病気になるかならないかには関係なく、抗原が体内に入ると抗体が出来る訳です。
感染して抗体ができて免疫になることを「能動免疫」と言います。抗原を何回も注射すると血液中には抗体ができ、その抗体を含む血液を別なヒトに注射しても抗体を血液中に存在させることができます。
このように抗体を含む血液または血清を他の個体に移して免疫にすることを「受動免疫」と言います。ワクチンを注射して免疫にする「能動免疫」法は、生体が免疫抗体を自ら作ることで、抗体ができるまでに1週間以上の日数を要しますが、作られた免疫能は長年持続します。
一方、抗体を含む血清を注射して免疫にする「受動免疫」法は、抗体を移して一時的に免疫にすることで、抗体を作らせることが無いので即効的に免疫状態になりますが、抗体は作られていないので長期間の持続性は期待できません。インフルエンザウイルスに対する免疫抗体を含む血清を作る事はできます。
しかし、いつウイルスの感染を受けるのかは皆目不明ですから、前もって免疫血清を注射して感染に備えることは、抗体の生体内持続性から考えて原則出来ません。
免疫血清療法は、北里柴三郎博士が100年前に確立した画期的な治療法です。
破傷風や毒ヘビの場合、免疫血清を注射すると即効的に効果がみれます。
しかし、問題もあります。例えば、あるヒトがマムシにかまれて、馬を免疫して作った抗体を含む馬血清を注射してもらいます。そのヒトにとっては馬の血清は異物ですから、抗体が出来ます。その同じヒトが今度は破傷風になったとします、血清を注射する必要がありますが、馬以外の動物で作った免疫血清でないと使えません。理由は簡単で、馬の抗体を持っているヒトに馬血清を注射するとショックをおこして呼吸困難から死んでしまいます。そこで、この欠点を克服するために、馬や羊という異種動物の抗体を使わずに、ヒトの抗体を作れれば血清療法は完璧になるのです。
しかし、どのような理由や必要性があったとしても、人間を実験動物にすることはできません。
すごいことに北里柴三郎博士は、免疫抗体を動物のかりずに、数年後の将来バイオの技術で作れるようになる、予言しています。そのバイオの先端技術を使えば問題は解決するのです。ヒトの抗体分子はヒトのリンパ球が作るのですから、ヒトのリンパ球を試験管の内で増殖できるようにする技術革新が待たれています。
明治時代には、ものすごく優秀な人材が数多く輩出していたんですね。
日本人に創造性が無いのでないようです。創造性を導き出すものが今の教育にはないのかもしれません。
みなさんもそう思いませんか。
司馬遼太郎の「21世紀に生きる君たちへ」にも書かれています。
字も大きく、小さい子供たちでも読めるように出来ています。


ぜひ、お読みください。