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コスモス新聞

コスモス新聞 病院からのお知らせ、ちょっとしたエピソード、医療に関するお話、患者様よりお寄せ頂いたメッセージ、思い出の映画など情報満載です。

コスモス新聞第121号

姿勢と腰痛

脊椎動物の背骨の配列はその生態にとって機能的な型になっています。四足動物は背骨全体が後弯していますが、二足動物は頚椎前弯、胸椎後弯、腰椎前弯、仙椎後弯という四つの彎曲からなっています。人間の場合は生まれた時には脊椎は全て後弯になっており、頭を持ち上げることができるようになって、頚椎前弯が形成され次第に三年くらいで腰椎前弯が形成されます。その後十年で成人と同様の脊椎配列になります。
人の背骨は胸椎後彎と仙骨後彎は生まれたときから備わっていますが頚椎前彎と腰椎前彎は二足足歩行という機能にあわせて形成されます。特に腰椎では大きな可動性を有する反面、上体の負荷がすべてかかるため病気の好発部位になります。成人での姿勢異常の多くは腰椎の彎曲に見られることが多く認められます。姿勢は可動性を有する脊柱の彎曲と仙骨の傾き、股関節のアライメントにより形作られます。この姿勢を維持しているものは脊椎の骨組織、筋組織、腔組織の3つが主なものです。
骨粗しょう症で強度の低下した骨では胸椎と腰椎の境目に圧迫骨折が発生しやすくなります。筋組織の場合では脊柱筋群といわれる筋肉の異常に伴い腰椎の前彎を減少する方向に傾くため脊椎に異常がみられるようになる。腔組織としては腹腔、胸腔という2つのクッションが脊椎の前方に位置しており体を前に傾けるときなどの姿勢維持に関係しています。力学的に言えば背骨の彎曲は彎曲数が多いほどクッション性が高くなり姿勢維持が増えます。しかし人間の場合には4つしか彎曲がないため鉛直負荷が少なくなり衝撃に弱くなります。姿勢の評価方法としてレントゲン撮影が一番簡単です。立位で行い上肢の骨が重ならないように腕は前方で指示して撮影されます。膝をなるべく伸ばしてリラックスした状態が必要です。重労働が姿勢にどのくらい関係しているかは多くの議論がありますが高齢者の脊椎のレントゲンを調べてみたところ高齢男性では重労働と変形所見とに関係は見られませんでしたが高齢女性では重作業と姿勢との間に相関関係が認められ女性の方が脊椎支持組織が弱いことが考えられました。女性では重労働に従事している人は作業内容や作業時間、作業姿勢への注意が男性よりも重要です。

遺伝と腰痛

人それぞれの顔や体型は千差万別であるように遺伝暗号であるヒトゲノムの配列も一人一人異なっています。遺伝子多型とは集団の中に明らかに異なる2つ以上の遺伝的性質が存在し、その頻度が1%以上に認められる状態であると定義されています。すなわちこれはまれなバリエーションではなくある程度存在する遺伝子変異のことです。近年高血圧、動脈硬化、骨粗しょう症、肥満といわれている病気はこの遺伝子変異によるものとされています。この遺伝子を調べることにより新しい治療法や予防法がみつかる可能性が大きくなってきています。
腰痛の原因としては椎間板、椎間関節、筋、筋膜、骨、椎体などがあげられます。椎間板由来の腰痛は昔より注目され、従来より職業、振動、喫煙、スポーツなどの、いわゆる環境因子の重要性が強調されています。しかし最近の研究では椎間板に対する危険因子としては遺伝性素因がもっとも重要であることが判明してきています。すなわち遺伝子レベルでの研究では椎間板性の腰痛には家族集積性が存在することが明らかになりました。
一卵性双生児の椎間板の変性所見は極めて類似していることがわかりました。椎間板ヘルニアの例を見ると中でも若年者の椎間板ヘルニアには遺伝性を疑わせる家族集積性が存在しています。
論文を見るとビタミンDレセプター遺伝子多型とMRIによる椎間板変性所見との関係が明らかになりました。その中には対立遺伝子が一卵性双生児の中には同部位に切断が見られることが明らかになっています。椎間板構成成分に関する遺伝子、分解酵素に関する遺伝子、骨に関する遺伝子に深い関係があることがわかっています。これらの研究が進むことにより保存療法が困難であるヘルニアも手術療法なく治療することが可能になります。
乞う御期待ですね。

思い出の映画 日本沈没

五月より日本に地震が頻回に発生しています。神戸のあの地震のことが忘れられはじめた時に。神のいたずらなのか。『日本沈没』はご存知、小松左京原作による東宝の大ヒット作です。監督をはじめ、音楽家、黒澤作品で著名な脚本家など、大御所が参加している大作。特撮も素晴らしい佳作。
わたし、大好きなんですよコレ。
小笠原諸島の小島が一夜にして海底に沈没、潜水艇は調査のため深海へ向かう。そこで学者の小林桂樹は、地殻変動に伴う恐ろしい事態を予見する。それは大地震や津波などと連動しつつ、数年以内に日本は沈没してしまうだろう、という恐ろしい推察だった。調査の結果や次々と起こる噴火はまぎれもなく予兆を示し、映画はカウントダウンの間の首相の丹波哲郎や、潜水艇の操縦士で探査に協力する藤岡弘、100歳でなお政界の黒幕である島田正吾などの、それぞれの意識の動きや事態にひたすら対処していく姿を丹念にそれも淡々と描いています。途中、天変地異が襲い、破壊される街や逃げ惑う群集が丹念に描かれます。地震によって火に巻かれる人や、頭上から降り注ぐ割れたガラスの破片を浴びる人、道路の陥没や高架の落下で多発する事故、襲う津波など、酸鼻のきわみというか、まさに地獄変。無残なリアルに徹底した、情容赦ない内容です。建物が破壊されることだけじゃなく、人間がどんな地獄を経験するかに焦点が当たっているような。
この映画の長所の一つにリアリスティックなシミュレーションというのがあります。地震の際、道が寸断されるから消防車が入れないとか、自衛隊のヘリコプターによる消化活動も消化剤の備蓄が圧倒的に足りないとか、その消化剤も火災が広範囲にわたると効果を発揮しないとか、特撮の派手さと巧いバランスを保ちながら、現実的な問題が矢継ぎ早に提示します。他にも、首相を中心にした災害対策会議上で、竹内均先生が地殻の変動について解説をしたり、いわゆる机上の計算に従って人々が審議しディスカッションする場面が多いのです。こういう実直な作りがいいです。
丹波哲郎がまたいい。抑え目の演技で誠実にリーダーシップを取っていく雰囲気とか。特に死を受容する第四の封書を前にした時の顔が、珍しく情緒的な演技で本当によかった。これは「日本人とは何か」を考えさされました。仕事をこなす人間の冷静なドラマに、好感の持てる映画です。原作は上下巻にまたがる大長編で、絶望的な状況に陥った日本列島を事細かに描いていた、と思います。随分昔にに読んだだけなのでよく覚えていませんが。しかし、ほんの二時間ほどの劇映画の中でそのテのヒューマンドラマを描くのは難しいと思います。日本は小っぽけな国だ、と日本人は思っている。しかし、世界に目を移してみれば、日本列島という国土そのものは決して広くはないが、そこに住んでいる人間は1億人を軽く越えている。これは、世界の国々の中で決して少ない数ではない。その、1億人以上の
人間を、世界が受け入れるかどうか。そして、そのような、ユダヤ人的な生き方を日本人ができるのかといった自問自答が映画のもうひとつのテーマとなっています。これは、戦後の自信喪失から立ち上がり、昭和元禄と言われる高度経済成長を実現し有頂天にあった日本人がオイルショックで足下をすくわれ、改めて資源に乏しい島国の悲しさを思い知ったとう時代状況と無縁ではないでしょう。このとき、はじめて日本人に「国際化」なる目標が生まれたのではないか。ようするに、外国との提携なしに日本という国が存在し得ないことの恐怖感が実感された時代なのである。
監督は『八甲田山』で知られる森谷司郎。黒澤明のお弟子さんで、偉大なる師と比較され、ちょっと可哀想な監督。でも、大作を任されてヒット作を何本も作った。この『日本沈没』も日本映画として初めてその年のNO1になったヒット作です。脚本はやはり黒澤明映画でキャリアを積んだ超一流の橋本忍。黒澤映画以外でも『砂の器』などの名作を残した名脚本家。日本映画のメインストリームとも言える人たちが作った終末感たっぷりの映画は、今見ても最後まで退屈しないで見ることが出来きます。
わざわざ日本を沈没させなくても、金融恐慌や原発事故、カルト団体の犯罪、など、高度化した文明が破産しかねない火種はいくらでもあります。この映画を政府関係者が真剣に観ていたら、、神戸での被害は最小限に、、と思わずにはいられません。