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コスモス新聞

コスモス新聞 病院からのお知らせ、ちょっとしたエピソード、医療に関するお話、患者様よりお寄せ頂いたメッセージ、思い出の映画など情報満載です。

コスモス新聞第100号

炭疽菌とは

世界各地で炭疽菌による被害が広がっています。
アメリカの郵便局の職員が炭疽菌に感染し死亡してから、しだいにアメリカ、世界へと広がりつつあります。
では炭疽菌とはどんな菌で、なぜ大問題になっているのでしょうか。
炭疽菌は数ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)程度の細長い形をした大型の細菌で、家畜などの動物と人に共通して感染する性質を持っています。
「芽胞」という一種の胞子になってしまうと、乾燥や熱、紫外線にも耐え、なかなか死滅しません。
通常は、動物がこの芽胞を食べることで発病します。
この時に感染部が黒く見えるところから「炭疽」の名前がつきました。
人獣共通感染症や生物兵器の歴史に詳しい山内一也東大名誉教授は「炭疽菌は熱に強く、感染力もあるので生物兵器として開発されてきた歴史がある。何年でも生存できるので、土中にも広範に存在し、日本の土中にもあるはず」と説明しています。
さらに一般の細菌は保管しておくことが困難なのですが、炭疽菌は、乾燥させると、自分で芽胞を作ってしまい、熱に強く、衝撃を受けても死滅しにくい性質になります。こういう性質になると、爆弾やミサイルに入れておいてもほかの細菌のように死ぬこともなく、さらに、爆弾を爆発させても、その衝撃で死んでしまうことも少なくなります。
そのために、いろんな国によって炭疽菌を使って生物兵器を作られてきたと言われています。
炭疽菌の性質を悪用して兵器にするなど、「人間のする事」ではないはずです。
1972年の生物学および毒素兵器の会議では140カ国以上が、生物兵器による脅威をなくすことに合意し、世界の国々が「生物兵器を作ったり保管したりするのはやめよう」という条約が結ばれています。
しかし、その後も作っていた国があることがわかってきました。
生物兵器はいままでの化学兵器に比べ、破壊力が強く安価であることが特徴です。
そして、生物兵器に用いられる生物量は比較的コントロールしやすく、輸送や散布が容易なのです。
1993年の米国政府機関(TheUnitedStatesCongressionalOfficeofTechnologyAssessment)の報告では、100kgの炭疽菌(Bacillusanthracis)を首都ワシントンで空中にばら撒いた場合、13万から300万人の死者がでると推計されています。これは、水素爆弾に匹敵するそうです。
細菌でも人から人へと感染するものを敵の軍隊に使った場合、敵の兵隊が感染するだけでなく、自国の兵士にも感染してしまう恐れがあり兵器としては使えません。
炭疽菌は人から人への感染がないので味方にも感染する恐れがないまま使えるのです。こうした生物兵器が使われた疑いがあると大問題になっているのです。
でも人間はこれまで細菌やウイルスによって病気にならないように、病気を治療するために、ということで研究を続けてきました。
その研究を人間を病気にしたり殺したりすることに使うなんて決して許されることではありません。
炭疽菌は人間への感染のしかたで3種の病気を引き起こします。
皮膚に傷がある場合、そこから入って「皮膚炭疽症」になります。
炭疽菌が空中から肺に吸い込まれると「肺炭疽症」になります。
この場合、菌が体中に回って毒素を出すため、治療が遅れると死亡してしまうことがあります。
さらに炭疽菌に感染している肉を、よく火を通さないまま食べると「腸炭疽症」になることがあります。

1.臨床症状
1)肺炭疽
肺炭疽の潜伏期は1-5日とされています。
発病初期には、発熱、乾性咳、筋肉痛、倦怠感などの急性ウイルス性上気道炎様症状を呈します。簡単にいえば、かぜみたいな症状です。
疑いがあれば、レントゲン写真を撮ったり、血液検査をしたり、痰の検査をする必要があります。一過性に症状が軽快する場合もありますが、通常は発病後、数日(1-3日)以内で重症化し、半数近くに髄膜刺激症状を伴い、呼吸困難にて死に至ります。
早期診断と抗菌薬投与がきわめて重要です。
1)皮膚炭疽
多くの場合は頭頚部、手、前腕に病変が生じます。
まずかゆみが生じた後、湿疹のようなもの出現し、1~2日以内に水疱化、その後、潰瘍を形成して中心が黒色を呈することが特徴である。周囲は浮腫がみられますが、痛みを伴うとはありません。

2.検査
米国CDCの炭疽菌同定のための基本的臨床検査プロトコールは
1)胸部レントゲン検査
2)血液培養、髄液培養(抗菌薬投与前に施行すること)
3)病変部位からの組織や体液(皮膚病変の水疱、便等)の培養
4)病変部位の組織の病理学的検査や検体の塗抹検査起因菌はBacillusanthracisである。
このバシラス群に属する菌は他にもあるので、他のバシラス群との鑑別が重要。

3.予防
肺炭疽はヒト-ヒト感染はないとされていますが、皮膚炭疽はその病変部位から感染する危険性があるため、手袋、マスク着用など標準的予防策をとることが必要です。

4.治療
炭疽症の治療は大きく炭疽症が疑われる段階の初期治療、確定診断がつき感受性も判明している場合の治療、さらに暴露後の発症を予防するための予防的投薬の3つに分けられます。大多数の炭疽菌はペニシリンに感受性があるため、第一選択薬はペニシリンです。

大きな不安

テロは場合によっては戦争よりも大きな不安を人々に与えます。
戦争ならば、制服を着た軍隊がやってきますが、テロはいつ来るかわからないからです。毒物事件もまた、いつ自分が巻き込まれるかわからない不安があります。
すでに感染を受けていても、自覚症状がなければ気が付かないこともあるでしょう。
万が一、飛行機からの散布や水道水に混入されたりすれば地域住民全員が被害を受けます。
今回のテロは、大きな被害があったということにとどまらず人類の歴史の大きな転換点になるような気がします。
アメリカの一部報道には、「冷戦時代の終わりか」といった物騒な表現も見られます。アメリカとイスラム世界との関係、中東情勢に大きな変化が起こるかもしれません。その変化が不信と混乱と争いへの変化にならないことを心から祈ります。
むしろ逆の意味で歴史の転換点となるように、人類の平和への大きな一歩となるように願って止みません。

思い出の映画 アラビアのロレンス

ディビッド・リーンの数ある名作の中でも紛れもない最高傑作でアカデミー賞7部門を受賞しました。
1914年、第一次大戦中のアラブ。
砂漠の利権を狙い侵攻するトルコ軍とアラブ人たちとの激突、大英帝国の介入と激動するアラブ社会に突如現れた英国人T・E・ロレンス。
ドラマは砂漠とその民を深く愛し、しかし英国人であるがために深い挫折感に追い込まれていくロレンスの苦悩を中心に砂漠の一大戦争スペクタクルを展開していく。
ベドウィン族の戦闘部隊が一瞬のうちに一村を壊滅させるシーン、疾走する列車を爆破するシーンなど、その迫力は今なお圧倒的で今日では絶対撮影不可能とまで言われています。
D・リーンが長年こだわり続けている"人間と自然""西欧文明と異文化の相克"のテーマがここでも徹底して描かれ深い感動を呼びます。
しかし、砂漠の英雄として尊敬していたアラブ民族も部族間の対立から、やがてロレンスを裏切っていく...。
この映画こそ大画面で見ないと正確に評価はできないのではないでしょうか。
砂漠の雄大さと遠くからラクダで走り来る人をカゲロウのようなゆらめきと共に望遠でとらえたショット。
じつに素晴らしい。
P・オトゥールの少し病的な演技。
彼なしでは、この映画は成立しなかったと思います。
私の好きなアンソニー・クインも出演しているが、風貌からしてピッタリはまっていました。
スケールの大きさにも圧倒されて、あっというまに見終わっていました。
実話のため歴史の知識を入れておくといっそうよく理解できます。
ところでこの映画には女性が一人も出てこない。
主人公ロレンスはこの映画で実はヒロインの役をも演じてたのだろうか。
演技が妙に艶かしく感じるのはその為だろうか・・・。
砂漠という大自然の中でいくら人間が大きな顔をしていても、それは自然か許していてくれてこそ、一度自然が猛威をふるえばなにもかもが瞬く間に砂に埋まれて・・。
そんなことを感じさせてくれる壮大な映像です。
アメリカが叫ぶ「テロ撲滅」のための戦い。
意義ある戦いであると声高に叫ぶその言葉さえ空しく響く戦争という実態。
いくつの真実があれば人は満足するのだろうか。
今の時期、じっくりと一度観ることをお薦めします。