香川県高松市での整形外科・内科・健康診断・予防接種は吉峰病院へ。

English

エッセイ

エッセイ

やまざくら「(4)」

静かな病院の廊下をヒタヒタと白い影が動いている。
夜明け前のほの暗い闇だ。
白い影は病棟からナースステーションを過ぎ、階段を降りて外来の受付で止まった。
ナースステーションでは当直の看護婦が点滴の用意をしている。見回りから帰った看護婦が懐中電灯を消すのも忘れて、足早に近ずきベットが空だったと報告する。
「誰のベット?」
「あの古川さんのです。」
「ああ、彼女は左マヒだからトイレも時間がかかるでしょ。後でもう一度、確認しましょう。」
「はい。」
その時、ナースコールが入った。
「はーい、中村さん、どうしました。」
明かりの点滅の場所を確認して名前を呼ぶ。
「すいません、ちょっと来てくれませんか。」小さな声が答えた。「すぐ、行きます。」中村さんは交通事故で骨折をして、まだベットから動けない患者さんだ。
「たぶん、導尿だと思うから用意をしてね。」慌ただしく部屋を出て行く後ろ姿に声をかける。
外来で止まった白い影は、その場をぐるぐると歩き回りだした。どこに行くともないのに妙に、スタスタと移動している。
やがて疲れたのか、長椅子に腰掛けてじっと動かなくなった。
暗い待合室の闇と溶けあい、誰もいない待合室になった。