香川県高松市での整形外科・内科・健康診断・予防接種は吉峰病院へ。

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エッセイ

エッセイ

ふきのとう「三」

夕食はなごやかだった。
誰もが楽しそうに、今この時間を大切にしていた。
次の計画は何にしようかと、会の幹事たちが思案していた。
「カラオケ大会をするのもいいな。」
「うん。場所探しが問題だな。」
「大人数だから、市民会館でも借りるか。」
「幾らかかるか知ってるか。予算が少ない事、忘れてないだろな。」
「じゃ、福祉会館はどうだろうか?」
福岡さんと看護婦たちは隅の方でボソボソと話している。
「ここの温泉の効能って何かしら。」
「さあっ、聞いてなかったけど。」
「たぶん神経痛、打ち身、肩凝り。」
「それじゃ何でもじゃない。」
ソロソロと後ろに忍び寄った水谷君が手を滑らせて、勢いを増した車椅子が福岡さんの車輪にぶつかった。
キャッと言って、水谷君をにらみながら、
「又、脅かそうとして。」
「ごめん、ごめん、驚かすつもりはなかったよ。本当、信じて」
にらんでいる怖い看護婦さんにも聞かすつもりの言い訳だ。
「何、話してたの。」
「温泉の効能、ここは何が効くのか。」
「あっ、それなら聞いてきました。婦人病、子宝、下の病気に効くそうです。」すました顔で答える。
「うっそー。」
「はい、特に嘘つきには効果抜群。たちまち効き目が現れ、二度と悪さをしなくなりましたとさ。」
「その口、どうにかならない!!。」黄色い抗議の声がとび、水谷君はたちまちしょんぼり。
「福岡さんは一人で参加したから、お風呂は私と一緒に入りましょう」
「はーい。温泉なんて久しぶりだから楽しみにしてました。早めに入りにいきませんか。」と、うれしそうな福岡さん。
「僕は一人で入りたい。」小さくつぶやいたが、
「5mしか歩けないくせして、何言ってるの。」と、鶴の一声。
右マヒの彼は、まるっきり歩けないのではない。
でも筋肉が萎縮しているため、5m位しか歩けないのだ。
女性たちはお風呂にいくための支度をしに行き、片隅に彼がポツンと残された。
その夜は久しぶりの解放感で興奮しているのか、なかなか寝かせてもらえなかった。
結局、和室の一つに集まり雑談になった。
夜も更けてくると、話しがシビアになってきた。
若い宮城君が言った「ビール一杯で勃起してしまう。」が発端だった。
下半身はマヒしているが、アルコールが血液に入ると充血して、勃起をうながす。
その他に薬でそういう状態にする事もできる。
だから結婚も出来るし、子供を作る事も可能だ。
でも下半身がマヒしているため感じる事は出来ない。
いつ射精するかもわからないが、心を通い合わせている二人には何の障害もないはずだし、肌を合わせる幸せにひたる事もできる。
結婚してから脊損になった人もいれば、脊損になってから結婚した人もいる。どちらの場合も配偶者の愛の深さに心を打たれるばかりだ。
様々な話がでたが、ここでは割愛させていただこう。又、いつの日かお話しできる事があると思う。