香川県高松市での整形外科・内科・健康診断・予防接種は吉峰病院へ。

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エッセイ

エッセイ

ふきのとう「有終(7)」

11月吉日
よく晴れた日曜日に宮城君の結婚式が行われた。
花嫁は白無垢。綿帽子が揺れて、幸せそうな横顔が見えた。
誰もがこの良き日に感謝していた。
実に心温まる式だった。
この地は海の幸に恵まれているせいか、引き出物のカマボコを見て驚いた。
大きな30cm位もある鶴と亀の形をしたカマボコなのだ。
どおりで重いと思った。
病院へ戻ると、ちょうど救急車が帰る所だった。
急いで白衣に着替え、詰所に行くと婦長が一人でいた。
「急患?」
「まっ、そのようなところですけど、裕太ちゃんです。」
「なんだ、また骨折か。」
「はい、ブランコから落ちたそうです。」
ヤレヤレ、又、目が離せない日々が続くのか。

・・・・・・・

それから2年して中山は再入院してきた。恐れていた事が起きたのだ。
検査の結果は最悪で、すでに肺に転移していた。
僕には治す事が出来なかった。それは神の領域だった。
臨終の近い、浅い息の下で中山は「先生の患者でよかった。」と言ってくれた。僕はその時、医者になんかならなければと思った。こんな悲しみはたくさんだと。
でも僕は今思う。医者になって良かったと。
たくさんの患者さんと接しながら、僕の精神は鍛えられ、成長する事ができたと。
こんな僕でも中山は、同じラグビーの仲間としての信頼と友情を持ってくれた。
それが、死の恐怖を少しでも和らげる手助けになってくれたと信じている。
あの夏のグラウンドの草いきれの中で彼と話した午後は、今も僕の心の中で息ずいている。